リリース日本人価値観調査

2022.06.13 Reports リリース日本人価値観調査

日本人価値観調査2022

日本人価値観調査2022 のサマリー

山猫総合研究所は、政治に関する意識や投票実態を定点的に調査し実態変化を時系列で捉えるため、インターネットパネルを利用した価値観調査を行った。

調査は、全国の18歳以上の男女3152人を対象に、2022年2月24日~2月28日の期間に実施された。項目は、外交安保、経済・社会問題、女性問題などをめぐる価値観のほか、日本の政党や政治家への評価、時事問題への意識など、総合的な価値観にわたる。今回は、2019年に行った同様の価値観調査における結果との比較も行った。

【要点】

■ 前回の調査と比べ、「国の制度に頼る前にまずは自助努力が大事だ」とする回答が有意に減少した。「日本は努力すれば報われる社会だ」と答える人が減少し、「日本が正しい方向に向かっている」と思う人は1割にとどまるなど前回調査よりも否定的な態度が顕著であった。

■ 「敵基地攻撃能力」の保有に関しては賛否がともに3割強と拮抗しているが、「反撃のためのミサイル保有」には半数近くが賛成し、年齢が上がるほど、また自民党を評価するほど賛成している。台湾有事の際に台湾を支援する諸外国への軍事的支援を行うべきだとする人は半数弱であったが、こちらも年齢が上がるほど賛成が増加し、自民党評価層ほど支援を行うべきと回答する傾向にあった。

■ 社会保障のために許容する消費税率に関しては、全体の平均で10.9%、自民党を評価する層で平均12.9%であった。増税してでも増やすべき予算に関しては高齢層が医療/介護・年金を挙げたのに対し、若年層は子育て・教育を挙げ、自民党評価層では外交/防衛が平均よりも多くなった。

■ 2017年衆院選、2019年参院選、2021年衆院選を通じて有権者の自民党への投票に最も影響したのは、安保・憲法に関わる価値観であった。2021年衆院選の投票先(選挙区・比例代表)ではいずれの年代でも自民党がトップであったが、70代以上では立憲民主党への投票割合が増えた。

■ 政治家への評価では吉村洋文大阪府知事の評価が最も高く、河野太郎衆議院議員が続く。小泉進次郎衆議院議員は依然カリスマ性を評価されているものの、前回調査よりも大きく順位を落としている。岸田文雄首相は「和を尊ぶ」項目において一位の評価を獲得しており、菅義偉前首相は「我慢強い」項目で一位の評価を獲得している。

■ 政治家との会話が過去一年に一度もない人が85%と圧倒的多数を占めるが、自民党を「とても評価する」と答えた人は会話している頻度が有意に高く、政治とのかかわりがそうでない人よりも密であることが分かる。

■ 外交安全保障に関する価値観では、党派を超えて中国の領土的野心に対する意識が際立っているが、年代別に見ると若い人ほど意識が少ない。防衛予算増額と憲法9条改正に関しては、70代以上で反対意見が目立つ。

■ 経済的価値観では、自民党を評価する層や自民党に投票した層は、経済成長を重視している度合いが相対的に高い。国債残高の多さを心配する声は回答者の6割を超えている。年代別に見ると高齢層ほど「改革」のキーワードに賛成する傾向が強く、自由貿易を支持するが、高額所得者や法人への課税強化を支持する傾向にある。

■ 社会問題では同性婚の容認と原発維持に関して党派対立がみられたが、全般的に価値観は党派に関わらず収斂しており、自民党評価層でも選択的夫婦別姓に反対する意見は僅かにとどまる。年代別では予算を使って東京一極集中を是正することを求める意見は高齢層ほど高い。

■ 女性問題では、女性の社会進出を前向きにとらえ、それへの障害を認識する声が多数を占める。女性問題に関する価値観については、ほとんど党派性によるギャップはない。

 

前回調査では、2019年参院選を踏まえ、社会リベラル課題を取り上げた立憲民主党が社会リベラル層への訴求が進まず、また消費税10%増税は党派対立を生んだものの、投票動機としては重要ではなかったことを指摘した。今回の2021年衆院選を踏まえた調査では、回答に新型コロナウイルス禍の影響と思しき変化がみられる。とりわけ、自助努力を重んじる回答が減り、日本の将来を前向きにとらえる回答が減ったこと、同時に、国債残高の増加について心配する声も大きかったことはその影響が少なからずあるものとみられる。

選挙では相変わらず、憲法と同盟に関する価値観が自民党への投票ともっとも連関しており、女性問題を含む社会問題における党派的な価値観ギャップもほとんど見られないことから、日本における最大の党派的対立軸は依然、安保と憲法であることが確認された。前回調査に比べて各政党は軒並み評価を下げている。そのなかでは自民党がもっともスコアが高いことから、前回の衆院選における自民党の勝利は、積極的な支持の結果のみならず、消極的な選択の結果でもあることが分かる。

日本人は、全体として見れば安全保障に対する危機感があり、現在の日米同盟のあり方を肯定している。とりわけ、中国の領土的野心に対する警戒心や、韓国との歴史問題に端を発する外交問題に対する非妥協的姿勢は党派を超えたものとして定着している。一方で、若年層は日米同盟に対するアレルギーや護憲の価値観も弱いものの、外交安保全般において上の年代よりもマイルドな価値観を有していることが分かる。時事問題への意識を問う項目でも、年代によって回答に歴然とした差があり、今後の安保論議においては全世代を包摂した議論を進めていく必要があると考えられる。